おれは“祓えない退魔師”

第四話

 (帰りたい…腹も痛い……)

 重い足を引きずるようにして円の中に入った。みんなの視線が、俺に集中する。

 「祐くん、がんばれー!」

 伊都の張り上げた声が、少しだけ緊張を和らげてくれる。

 「では、始めます」
 「あ、ちょっ、待ってーー」

 教師が手をかざすと同時に空間が歪む。影が、ゆらゆらと現れた。

 「でっ、でかっ!!」

 今までで一番大きな影が、円の中に広がっていく。

 「でかいでかいでかいでかい!!」

 (やばいって! こんなの、絶対無理だろ!!)

 頭の中が真っ白になって、身体が硬直する。
 影が、にやりと笑った。

 「ひいいぃぃぃぃ!!」

  影に背を向けて全力疾走。チラと後ろを向くと、影は広がりながら俺を追ってきていた。

 「どうすりゃいいんだよー!!」

 俺は、東間や銀髪みたいに妖を祓えないし、伊都みたいに心を開くこともできない。しかも霊具もまだ持ってない。俺にできることはーー

 「……って、やっぱ思いつかねぇよー!」

 時々後ろを振り返りながら、円の中を逃げ回っていると、

 「うわっーー」

 足がからまってバランスを崩した。
 ――ズザザザザザ!!
 頭から地面に突っ込んで派手に転んだ。頭上には影が迫っている。

 (だめだ! やられる!!)

 母さんの顔が浮かんだ。

 「くっそがー!!」

 身体を反転させて、無我夢中で手のひらをかざす。体の内側が熱くなり、その熱が手のひらに集中する。小さな光の玉のようなものが出現した。――その瞬間、周りの雑音が遮断され、妖めがけて弾丸のように飛んで行った

 「え……」

 光の玉は、妖の身体を貫き、結界をも破壊して、山の彼方へ飛んで行ってしまった。

 「な、なにが起きたんだ……?」

 周りで、がやがやと騒ぐ声がする。

 東間と伊都が駆け寄ってきた。

 「……なんだよ、これ……」

 おれはそこで意識を失った。





 「フォッフォッフォッ。今年はおもしろい新入生が多いようじゃのぅ」

 ――校庭の木の上、儀式をみていた校長が楽しげに笑っている。

 「じゃが、神代祐……あやつの力はーー」

 顎に手をあてて、倒れている祐をじっと観察する。

 「バディ制度、試してみるかのぅ~」

 なにかを企んでいるような意味深な笑みを浮かべて、素早く去っていった。


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