【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「さっきの子だよ。メリネ研究所から派遣された子。君が逃げ腰になった姿を見たのは、初めてだな」
 先ほどまで悩んでいたユースタスだというのに、今度は笑い出す。本当に情緒の激しい男だ。
「さて、と。私もそろそろ戻ろう。わかっているとは思うけど、さっきの子が辞めるようなことはしないようにね」
「辞めるようなこと、だと?」
「そうやって睨むことだよ。魔導士団からも苦情があがってきたし。君の部下からも、特に研究部門にいる彼らからは、異動させてほしっていう嘆願がたくさん届いているくらいだからね。部下に好かれないと、足元をすくわれるからな」
 ふん、ともう一度鼻から息を吐いたライオネルは「しっしっ」と虫でも払うかのように手を振ってユースタスを見送った。
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