【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 特に、十年前の爆発事件に巻き込まれた被害者の名簿なんかは、あの場にあってはいけないものだ。
 資料を全部読み解く時間はなかったが、あれがすべて明るみになれば、あの爆発事故だって意図的に起こされたものだったという証拠が出てくるかもしれない。
 そしてそのために、アンヌッカは前日から王城に宿泊することとなった。明日の朝から隠し部屋の封印を解くためだ。
 というのが表向きの理由で、あの部屋の封印を説かれて困る者は、きっと夜のうちにカタリーナを襲うだろうとライオネルたちは考えていた。まさしく囮である。
 王城に一晩泊まることについては、アリスタとマーカスには夜勤になったと伝えた。夜間しか貸し出しのできない資料があるため仕方なくと伝えたところ、少しだけ同情された。
 あの二人は、アンヌッカが未だに軍に派遣されていることを後ろめたく思っているのだ。
 ヘレナにも泊まりになることを伝えたが「では、その日はおひとり様を満喫させていただきます」という明るい声が返ってきた。
 マーレ家では、定期的にやってくるコリンズ夫人さえなんとかすれば自由にできるのだから、アンヌッカが外泊しようが問題ないはずだ。そこに余計な追求が入るのであれば、きっとアリスタとマーカスがなんとかしてくれるだろうと、そんな楽観的にも考えていた。
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