【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 はっと意識が浮上する。カーテンの隙間からは、太陽の光が室内に差し込んでいる。アンヌッカは人を呼ばずにささっと着替えた。そして髪の毛をいつもと同じように、一つに束ねたうえでくるりと巻いてシニヨンを作りピンで留める。
 そこまでやってからベルを鳴らして人を呼んだ。
「おはようございます」
 やってきたのは年配の侍女だったが、アンヌッカが一人でさっさと身支度を調えてしまったため「朝食をお持ちしますね」と言って、部屋を出ていった。
 ライオネルと結婚してからというもの、なんでも一人でこなせるようになった。いや、一人でこなさなければならなくなった。
 すぐに朝食は運ばれてきた。パンとスープとサラダと。いつもアンヌッカが食べているメニューと代わりはないのだが、一つ一つの素材が違って見える。
「マーレ少将が、お食事をご一緒したいとのことですが、よろしいでしょうか?」
 そう聞かれてもアンヌッカに拒否権はないだろう。問題ないことを侍女に伝えると、すぐにライオネルがやってきて、有無を言わさぬ勢いでアンヌッカの向かい側に座る。
「おはよう、体調はどうだ?」
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