【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「とにかく、今日はもう寝ろ。日も変わっているしな」
「もう、そんな時間ですか……」
 アンヌッカが寝台に潜り込んだのは、今から二時間以上も前だ。
 その間、眠りもせずに寝台の上でごろごろとしていただけ。だが、やはり気持ちは昂ぶっており、眠れそうにはない。
「安心しろ。おまえの部屋の前には見張りをつけておく」
 そう言われても、やはり先ほど襲われたのは怖かった。
「……あの、わたしが眠るまで側にいてくださいませんか?」
「な、何を……?」
「あ、やっぱり変なことを言ってごめんなさい。ちょっと……怖かったのです」
「なるほど。おまえも怖いって思うことがあるんだな。ほら、こうやって手を握っていてやるからさっさと寝ろ。おまえが寝ないと俺の任務は終わらない」
 そのまま、アンヌッカは寝台に横になった。繋がれた手から感じる体温は心地よく、それが全身に伝わっていくような感じがした。
「……おまえ。そうやって髪をおろすと、別人みたいだな……」
 とろとろと眠気が襲ってきたアンヌッカに、ライオネルの言葉は届かなかった。

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