【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 だが、ライオネルからはなんの指示もなかった。そもそも、結婚式当日になって、結婚式を欠席するような相手だ。それも参列者とではなく、新郎としての立場だというのに。
 とにかく昨夜のコリンズ夫人の態度は褒められたものではないが、そこに互いの認識の違いがあったことだけはわかった。
 コリンズ夫人は、定期的に屋敷の様子を見に来るようだ。そう、ライオネルから指示を受けているらしい。
 しかしアンヌッカも自分のことは自分でできるしヘレナも手伝ってくれるので、コリンズ夫人には無理のない範囲でとだけ一言添えた。
 コリンズ夫人も、今では息子夫婦と暮らしているとのこと。だけどマーレ家には昔から世話になっており、その縁もあって屋敷の管理を任されたとのことだった。
 コリンズ夫人の置かれた立場も理解し、彼女と相談した結果、十日に一日は様子をみにくるという話でまとまった。また、食品など必要なものは、昔からの付き合いの商会が届けてくれるようだ。
 そういった細やかな手配もコリンズ夫人が根回しをしていたからだった。
「旦那様は、滅多にこちらにはお帰りになりませんから」
 コリンズ夫人がそう言ったときには、アンヌッカもヘレナと顔を見合わせた。
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