【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 アリスタは腕を組んでう~んと唸ってはいるものの、アンヌッカの考えに真っ向から否定はしないだろう。
「……だが、誰の名を借りる? いっそのこと偽名を使う……?」
 独り言のように呟くアリスタだが、偽名を使ったとしたら相手が軍なだけにすぐにバレてしまう。
「父さん……ここは、プリシラの妹とか、どうでしょう? プリシラだってこの研究所の人間です」
 むしろ裏所長と呼ばれるくらい研究所を切り盛りしているのがプリシラだ。彼女には妹が一人いて、隣国のランサミトに留学している。
 というのも、ランサミトは芸術の国とも呼ばれている国で、彼女はランサミトの絵画の魅力に取り憑かれてしまったからだ。そのため両親の反対を押し切り、絵を学ぶためにランサミトへの留学という道を選んだのである。両親は呆れていたようだが、かわいい妹の背を押したのはプリシラだったと聞いている。
 マーカスとプリシラの結婚式で、アンヌッカも彼女とは顔を合わせていた。同じくらいの年頃で、お互い、好きなものに夢中になっているというのも共通しており、それなりに話が弾んだ記憶がある。
 確か、名前は――。
「カタリーナだったかな」
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