Devilの教え
 あんな事のあとひとりで家に帰ってたら、それこそやり切れない思いに泣いてたかもしれない。


 強がりでも本心でも、誰かに愚痴れるっていうのは大切なんだって、こういう時に実感する。


「まあ、そんな男さっさと忘れるに越した事はないって感じね」

 ひと(しき)り笑ったあと、アサミ先輩はそう言って、再び缶コーヒーに手を伸ばす。


「……はい」

 言われてる事は正しい事だと思うから、素直に返事するしかなかった。


 でも、それが正しいって分かってても、当分忘れられそうにない。


 好きとか嫌いとかそういう感情は置いておいたとしても、あの時の衝撃は忘れられそうにないし、このムカつきも当分消えそうにない。
< 21 / 455 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop