【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「ねえ、おじさんはお医者さんなの?」
「鹿島先生みたいなお医者さん?」
「ん? ああ、鹿島先生の部下のお医者さんだ」

 そういえばさっき、鹿島先生の話題が出ていた。席が遠くてよく聞こえなかったが、鹿島先生が父親の主治医なのだろう。
 百聞は一見に如かず……とはよく言うが、ここへ来て家族を見るだけで、叶恋を取り巻く環境がよくわかる。
 正直なところ、階段室で話を聞いた限りでは、両親がいないのか、はたまた家事や育児を押し付ける毒親がいるのか、そんな想像をしていたが全く違った。
 両親はまともで、ちゃんと叶恋のことを心配している。弟たちも叶恋に懐いているようだ。

「先生、すみませんね。こんな体じゃなかったら迎えに行っていたのですが……」
「いえ、帰り道ですし、たいして遅い時間でもありません。それより、少しお父さんの病状のことを伺っても……?」
「ああ、もちろんです。今年の3月に脳梗塞で倒れましてね、誠仁館医療センターで手術を受けました。それから長期のリハビリ入院を経て、7月の末にやっと退院したんです」
「そうでしたか……」
「うちは、主人と二人で小さな会計事務所をしているんです。主人がいない間は私が会社を守らなければならなくて……。ちょうど決算期が重なって、私は身動きが取れない状態でした。そんな状況でしたので、叶恋が会社を辞めて家事と看病に専念してくれたんです」
「この子には申し訳ないことをしましたよ……」
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