【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「あの、26歳ですが新人には変わりないので、ビシバシしごいてくださいね」
「いや、体育会系じゃないんだから。
ここ、ゆるいんで、そう構えなくても大丈夫ですよ。普通に喋ってください」
「でも私の方が後輩なので敬語は……」
「じゃあお互いに。ほんと、ゆるいの。
だから伊原さんも私には敬語を使わなくていいから。あ、かれんちゃんって呼んでいい?」
「は……うん! もちろん」
「私も菜々って呼んでね。
かれんちゃんってどんな字書くの?」

 字……。
 これを説明するのがいつも恥ずかしいのよね。

「……叶う恋って書くの」
「え、めっちゃ可愛い!
叶恋ちゃんって『クッキングアイドルかれん』みたいじゃん。
……そういえばお顔も似てる?」
「あ、うん、そ、その世代の人にはたまに言われるかな……」
「懐かしいなー。アイドル顔って羨ましいわ。
……こりゃ、争奪戦だな……」
「え?」
「……いや、なんでもない。
私は菜っ葉菜っ葉の菜々です。
じゃあお仕事の説明をするね」
「ふふふっ……はい! よろしくお願いします!」

 それから私は、菜々ちゃんから医局秘書の業務内容を教わった。

 基本的に8時半までに出勤。
 タイムカードがあるわけではないから、前後しても大丈夫。退勤はざっくり17時半。

 医局内のお仕事のメインは電話の受け継ぎ。
 これが結構大変らしい。
 ドクターは常に医局にいるとは限らないからだ。

「9時を過ぎたこの時間になると医局にはほとんどドクターがいなくなるの」

 たしかに、さっき自己紹介をしたときは何人かいたドクターも、ほぼいなくなっている。
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