【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「永真のことは姉がいつも心配していてね。
私にも誰かいい子はいないかと、聞かれていたんだ」
どうしよう……。
偽装なのに、教授にまで知られてしまったら、もう後戻り出来なくなるんじゃないの?
かと言って、ここで勝手に否定もできないし。
ああ、やっぱりUSパークに釣られるんじゃなかった!
「あの……このことは医局の皆さんには内緒にして頂けるとありがたいです。
仕事……しづらくなりますので……」
「もちろん私から誰かに言うことはないよ。
ただ……永真が、どうかな」
「え?」
「まあ、私が言わなくても、にじみ出るものがあるかもしれないね」
にじみ出るもの?
それはいわゆる『匂わせ』ってやつですか?
そんなことしませんよ?
汐宮先生だって、偽装恋人なのにわざわざ『匂わせ』なんてしないでしょうに。
ニコニコと笑う黒川教授に、私も本音を語らないよう笑顔で「最善を尽くして気をつけます!」と言い、教授室を後にした。
◇ ◇ ◇
「叶恋!」
「……莉久くん?」
「やっと会えた。どこ行くの?」
「外来にお届け物をしていたの。この後は郵便」
9月も末になり、すっかり仕事にも慣れてきた。
最近では菜々ちゃんに確認の電話を入れなくても、臨機応変な対応が出来るようになっていた。
今日も院内を回っていると、外来前のエスカレーターを降りたところで、莉久くんが声をかけてきた。
莉久くんと会うのは病棟で久しぶりに再会して以来だ。
「今週で脳外は終わりなんだ。なんとしても終わる前に叶恋に会いたいと思ってたところだったんだ」
「……? どうしたの?」
「まだ連絡先を聞いてなかっただろう?」
「あ、そうだったね」
そういえば、あの時汐宮先生が来て話が途切れてしまったんだっけ。
私たちはその場でスマホを出し合い、やっとメッセージアプリの連絡先を交換できた。
私たちが話をしている間も、通りかかるありとあらゆる女性が、莉久くんを見ている。
中には「先生〜また相談に乗ってくださいね」などと話しかける人も。
莉久くんはにっこり笑って流していた。慣れているのだろう。
このプレイボーイぶりにはただただ感心する。
「次は精神科なんだ。今よりは余裕ができると思うし、食事でもどう?
話したい事がいっぱいあるんだ」
「うん! 私も話したいことがいっぱいあるよ。
莉久くんすっごく驚くかも」
15歳離れた双子の弟たちのことはまだ話していない。きっと驚くだろうな。
「じゃあ、また連絡するよ。定時は何時?」
「5時半。残業は今のところ一度もないから、それ以降ならいつでも大丈夫だと思う」
「わかった。何か苦手なものって――」
「……叶恋ちゃん?」
莉久くんの言葉を遮るかのように、後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこに京香さんが立っていた。
私にも誰かいい子はいないかと、聞かれていたんだ」
どうしよう……。
偽装なのに、教授にまで知られてしまったら、もう後戻り出来なくなるんじゃないの?
かと言って、ここで勝手に否定もできないし。
ああ、やっぱりUSパークに釣られるんじゃなかった!
「あの……このことは医局の皆さんには内緒にして頂けるとありがたいです。
仕事……しづらくなりますので……」
「もちろん私から誰かに言うことはないよ。
ただ……永真が、どうかな」
「え?」
「まあ、私が言わなくても、にじみ出るものがあるかもしれないね」
にじみ出るもの?
それはいわゆる『匂わせ』ってやつですか?
そんなことしませんよ?
汐宮先生だって、偽装恋人なのにわざわざ『匂わせ』なんてしないでしょうに。
ニコニコと笑う黒川教授に、私も本音を語らないよう笑顔で「最善を尽くして気をつけます!」と言い、教授室を後にした。
◇ ◇ ◇
「叶恋!」
「……莉久くん?」
「やっと会えた。どこ行くの?」
「外来にお届け物をしていたの。この後は郵便」
9月も末になり、すっかり仕事にも慣れてきた。
最近では菜々ちゃんに確認の電話を入れなくても、臨機応変な対応が出来るようになっていた。
今日も院内を回っていると、外来前のエスカレーターを降りたところで、莉久くんが声をかけてきた。
莉久くんと会うのは病棟で久しぶりに再会して以来だ。
「今週で脳外は終わりなんだ。なんとしても終わる前に叶恋に会いたいと思ってたところだったんだ」
「……? どうしたの?」
「まだ連絡先を聞いてなかっただろう?」
「あ、そうだったね」
そういえば、あの時汐宮先生が来て話が途切れてしまったんだっけ。
私たちはその場でスマホを出し合い、やっとメッセージアプリの連絡先を交換できた。
私たちが話をしている間も、通りかかるありとあらゆる女性が、莉久くんを見ている。
中には「先生〜また相談に乗ってくださいね」などと話しかける人も。
莉久くんはにっこり笑って流していた。慣れているのだろう。
このプレイボーイぶりにはただただ感心する。
「次は精神科なんだ。今よりは余裕ができると思うし、食事でもどう?
話したい事がいっぱいあるんだ」
「うん! 私も話したいことがいっぱいあるよ。
莉久くんすっごく驚くかも」
15歳離れた双子の弟たちのことはまだ話していない。きっと驚くだろうな。
「じゃあ、また連絡するよ。定時は何時?」
「5時半。残業は今のところ一度もないから、それ以降ならいつでも大丈夫だと思う」
「わかった。何か苦手なものって――」
「……叶恋ちゃん?」
莉久くんの言葉を遮るかのように、後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこに京香さんが立っていた。