【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「それで、脳外の医局秘書になったのは?」

 私は、大学を卒業してから今に至るまでをかいつまんで話した。

「そっかー。おじさんも大変だったんだな。
でもそれ、一番大変なのは叶恋じゃないか。
仕事まで辞めたんだろう? 
なかなかできることじゃないよ」

「んー……でも、今はこれで良かったと思ってる」

 あのまま何事もなくイシハラに勤めていて、陽介さんと順調だったとしても、理沙のことでどうなったのかわからない。
 在職中に社内で三角関係の泥沼なんて最悪だ。
 今は別れて良かったと心から思っているから。

「それは……汐宮先生と出会ったからか?」

「え? ええっ?」

 どうしてここで汐宮先生が出てくるの!? 
 汐宮先生との偽装恋人関係のことも話していないのに。

「あの人、病棟でも必死だったじゃないか。
俺と叶恋の話を邪魔してきて。
あれって牽制だろう?」

「病棟? 牽制?」

 それって、莉久くんと再会した時のこと? 
 研修医に注意していただけなんじゃないの?

「まさかもう、付き合ってるの?」

「え、いや……そんなんじゃ……」

「でもあっちは思いっきりその気だと思うけど。
……俺、病院の1階で会った時も見たんだ。
叶恋、ピンクの服を着た女の人に話しかけられただろう?」

「うん……」

「誰だろうと思って、あの後少し離れたところから見てたんだ。そうしたら汐宮先生が、現れた。
あれは叶恋を庇っているように見えたな」

 う……いい線をついている。
 というか、あれ見られてたんだ。

「あの人、汐宮先生の元カノか?」

「……!」

 なんでわかったの!? 
 私もなんとなく気づいたけど、それはホテルでも会って二人の雰囲気を見ているからであって、あの時初めて会ったのであれば、わからなかっただろう。

 離れたところから見ていた莉久くんがなぜ?

「ど、どうして……」

「あの人、そういう顔してたから」

「そういう顔?」

「芝居がかっているっていうか、んーちょっとイジワルな?」

「プッ……そうかな」

「ああ、自分のモノを取られそうでイジワルしてる顔。ああいう顔は、まあ……見慣れてる」

 あれを見慣れてるって、どんな人生を送ってきたんだ。相当場数踏んでるのね、このプレイボーイ。

「で、どうなの? 元カノ?」

「……あの人は汐宮先生のお兄さんのお嫁さんよ。
兄嫁っていうのかな。
前に少しお会いしたことがあって、挨拶していたの。
それだけよ」

「ふーん……」

 これは全く信じていない顔だな。
 でも、ここで汐宮先生のプライバシーに関わるようなことを、私が言えるはずもない。

 私は、これ以上は言えない、と伝わるよう微笑んだ。
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