それでも私は恋をする。

Chapter.1

〜♩....〜♩...〜♩...

耳元から朝のアラームのサウンドが私の鼓膜を突き通す。目は開けてないが、手探りで枕の下にあるスマホを取り、薄目を開いてアラームを解除する。ただいまの時刻は朝8:00。カーテンからほんの僅かだけど陽の光が差し込み、チュンチュンと鳥が鳴き声が静かな部屋に響き渡る。私は昔から寝起きが良く、そのままスマホをいじり、友達から連絡やSNSをチェックする。それが私の朝の日課だ。

「...んー...、ぃ、今何時ー?...。」

私の隣から眠たそうな低い声が静寂を壊した。

「今、8時。」

私がそう答えると、隣にいる人間は「そっかぁ。」とだけ残し、私がいる逆の方向に体を寝返りした。

隣にいる人間は3日前に私がよく遊びに行くバーで新しく働き始めた3つ年上の男。苗字は分からないが、名前はカケル。すらっと身長が高く、襟元まで伸びた長い襟足に黒と金のメッシュが入っていて口元にはピアスが付いている。顔もどこのパーツも整っていて、寄ってくる女の子は多いと思うし、女の子に困っていなさそう。

昨日、カケルからバイト終わりに会いたいと連絡が来て私も暇だった為、夜コンビニでご飯とお酒を買ってカケルの家に行った。同じベットで寝るから流れ的にSEXもした。

全く付き合ってもないし、3日前に出会った男とSEXが出来る自分に流石に憎悪がする。お酒が入っていたからかもしれないが、私は自分で自分の首を絞めていることを気づいていたけど、そのまま見て見ぬふりのようにしていた。

私はベットの下に捨てられた下着と服をかき集め、洋服を着る。今の時刻は8:13。今日は2限から大学がある為、洋服の交換と化粧をする為に家に一旦帰らなければならない。

「...カケルくん、帰るね。」

そっと声を掛けてみたが反応はなく、すーすーと寝息だけが聞こえる。私は忘れ物がないか入念に鞄の中をチェックし、静かに音を立てないように家を出た。

家を出ると太陽が私のことを突き刺し、まだ朝の8時過ぎなのに夏を思わせるかのような日差しを浴びせる。普通この時間は通勤通学の時間帯でちらほらと近くの中学生が登校している。みんなしっかりとこれから学校に向かっているのに、私は朝から着るような服ではなく、昨日の少し露出が多く、またボサボサな頭にすっぴんの顔で歩く。典型的なThe 朝帰りで知り合いに会ったらどうしようと内心ハラハラしていたが、ちょうどタイミングよく空車のタクシーが走ってきた為、タクシーを捕まえて私の家に帰ることにした。

タクシーに乗って15分後くらいに自分の家に着き、2100円を払い、約10時間ぶりに家に入る。すぐに着ていた洋服をフローリングに脱ぎ捨て、下着姿のままベットに横たわった。そして、いつの間にかまた寝てしまっていた。アラームも掛けずに。


〜...♬〜...♬〜...♬

私はハッと目が覚め、電話がかかっていることに気づく。着信の相手は親友の紗栄子からだった。

「...はぁーい。」

寝起きということもあって、テンションも低くかった。

「あんた、2限出ないの?あと2分で始まるけど。」

「...さっき家帰ってきて寝ちゃってたー。2分で学校行けないし、何も用意してないから3限から行くわ。今日の講義まだ2回しか休んでないし。」

「あー、昨日カケるんと飲み行く言ってたもんね。ってか、菜穂来ないんだったら私も3限からにすればよかったわ。えー、菜穂昼ごはん前には絶対来てね、1人でご飯食べたくないから!」

紗栄子は私が返事をする前にぶちっと電話を切り、内心イライラしてるんだろうな、と察した。昼ごはんの時間が始まるまでおよそ2時間半。とりあえず私はベットから抜け出し、学校に行く準備をした。

〜♩

メールが届き、紗栄子かなと思いながら確認する。メールの相手はカケルだった。

『菜穂っちおっはよー!何で何も言わず帰っちゃうのさ!また会いたいな♡』

私はメールの友達の一覧からカケルを選び、ブロックをした。ずるずると関係が続くのは好きではないし、きっとこれからカケルと付き合う未来見えない。あと、お世辞にもカケルはSEXが上手いとは言えなかったかも。私はスマホをテーブルに置き、化粧の続きをした。


「菜穂!こっちこっち!」

大学の学生ホールに行くと、2限終わりで昼ごはんを食べようとする学生で混んでいた。紗栄子は席を確保してくれて、大きな声で私の名前を言い、手招きをする。

鎖骨まで伸びた茶髪に焼けた小麦色の肌、ぱっちりとした瞳は少し柄の強いカラコンが入っている。身長165センチとすらっとして、スタイルもいい。たまに学校内でもすれ違う人がわざわざ見返すほど可愛い自慢の親友だ。

「で!カケるんとどうだったのー!!」

「切ったよ。」

「えー!!!だって菜穂今日朝帰りだったんでしょ?なんで!?」

学生ホールに響く紗栄子の高い声。

「付き合うつもりないし、多分あっちも遊びだし。あとエッチ下手。」

そう言うと紗栄子はガハハと笑った。

「カケるんも可哀想だわ!まぁ、体の相性合わないのはしゃーなし!」

その後も紗栄子と私は何の他愛もない話をして昼休みを過ごした。昼休みが終わった後は3限を受けるために、3階にある講義室に向かった。


「菜穂!紗栄子!おはよん!」

声のする方を向くとそこにいたのは同級生の朝陽だった。朝陽は誰にでも仲良くする優しい男で私と紗栄子とほぼ時間割が被っている為、あっという間に仲良くすることができた。朝陽は見た目はチャラチャラしているがよく1人で資格の勉強をしているのをよく見る。

「朝陽おはよー!ねぇ聞いて!菜穂ったら1日で男切ったんだけど!」

「菜穂〜、お前に切られた男が可哀想だぜ。俺だったら立ち直れないぞ。」

「だって、いいなって思ったところなかったんだもん。だって紗栄子だってエッチしてる時さ、男でかい声で喘いでたら無理でしょ?」

「確かに無理だけどー笑。菜穂だってあのバー行きづらくなるじゃん!」

確かに紗栄子の言うとおりいつも暇な時行くバーに行きづらくなるのは結構痛い。まぁ、カケルがいない時に行けばいい話なんだけど。その後、教授が来て講義が始まった。

講義中はただ教授が1人でべらべら話して、前にいる優等生たちに意見を聞くだけ。後ろの席に座ってる私たちには全く触れてこないからスマホをいじってるだけ。

〜♩

『今日バイト来る?』

差し出し相手はバイトの先輩の飯塚さんからだった。初めて会った時から私にちょっかいを掛けてきたり、一緒に賄いを食べたり、バイト仲間の中でも親しい先輩だ。たまに連絡がくるが最近なかった為少し驚いた。

『行きますよー』

飯塚さんは私より6歳上でバイトというよりかは店長の手伝いで不定期で来てくれる。自分で飲食店を開き、そこの店長もしている。多忙なのにちょくちょく来てくれる、優しいお兄ちゃんみたいな存在だ。

『今日早く店閉めれるからそっち行くわー。サボらず来いよ』

飯塚さんらしい文章でクスッと心の中で笑ってしまった。今まで片手で数えられるくらいしか被ったことがないが、私が裏作業ちゃんとできてるか後ろで見てくれたり、店内ですれ違う時ニコッと笑ってくれる。いつか飯塚さんが彼氏だったらな、て考えたことがあるが飯塚さんには美人な彼女さんがいることが最近分かった。メッセージアプリの背景画が海をバックににこやかに笑う華奢で綺麗な女性で彼女以外いないだろう、と勝手に自己完結をしていた。飯塚さんもかっこいいし、美男美女で納得をする。

『行きますよ>_<!お仕事頑張ってくださいね』

今日飯塚さんに会えるのが楽しみになってきた。以前、紗栄子に飯塚さんの話をした時、紗栄子は「いいなって思ったらご飯とかデートに誘えばいいのに」と言われたことがある。正直、行けるなら行ってみたいが彼女がいる人には私は全く恋愛感情を出すことができず、その時間が無駄と思ってしまう。

〜♩

『お、サンキュー。またあとで』

「何、にやついんのよ。」

隣から紗栄子が小さい声でにやにやしながらシャーペンで私の腕をつつく。

「飯塚さんから連絡きた。」

「飯塚さん?あ、彼女持ちなのに菜穂にちょっかいかけてるやつね。」

「ちょっかいていうか、優しくしてくれるだけだよ。」

「またまた。」



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