黒澤くんの一途な愛
「栞里っ」
「黒澤。この女を返して欲しかったら、俺と勝負しろ。もちろん、1対1でな」
「おー、望むところだ」
二人はすごく怖い顔をして、互いに睨み合っている。
1対1って、もしかしてタイマンとかいうやつ?
それを、黒澤くんと横峯さんがやるの?
「良いか? 俺が勝ったら、学園のトップの座もこの女も全て俺のものだ」
「ハッ、笑わせんなよ。横峯にそんなこと、させるかよ。栞里もトップの座も、お前にだけは絶対に渡さねぇ!」
黒澤くんが横峯に向かって走り出した途端、私の腕をキツくつかんでいた横峯の手が、するりとほどけた。
「花村さん、こっち」
その隙に赤松くんが私の手首をそっと掴み、黒澤くんたちから離れた場所へと私を連れて行ってくれる。
──パァン!
黒澤くんと横峯、二人の拳と手のひらがぶつかり、周囲に乾いた音が響く。
「もしこの勝負で俺が勝ったら、横峯はもう二度と栞里に近づくな。学校でもトップの座を狙ったりせず、卒業まで大人しくしてろ」
「ああ、いいぜ。その代わり、俺が勝ったら……分かってるな?」