黒澤くんの一途な愛


ハッとして顔を上げると、私を抱き寄せたのは黒澤くんだった。


「く、黒澤……お前、いつの間に!?」

「お前の仲間みんな弱すぎて、あっという間だったわ」


黒澤くんが、余裕の笑みを浮かべる。


倉庫の地面には、横峯の仲間たち全員がグッタリとして力なく伸びていた。


反対に黒澤くんや赤松くん、村崎くんの3人は傷ひとつついていない。


す、すごい……あの大人数を、たった3人でやっつけちゃうなんて。


「くそっ。役に立たない奴らだな」


横峯が忌々しそうに舌打ちしている。


「栞里、待たせたな」


黒澤くんが大急ぎで、私の手足の縄や口にかまされていた布を外してくれた。


ようやく自由になった口から、私は大きく息を吸う。


「栞里、怪我はないか!?」

「ありがとう。大丈夫だよ」


黒澤くんの顔を間近で見た途端、ホッとして力が抜け、ぐらりとよろめいてしまう。


そんな私の腕を、黒澤くんよりもひと足早く横峯が取った。


「おい、横峯!」

「こいつは渡さねぇよ」


私はそのまま、再び横峯に捕らえられてしまった。

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