黒澤くんの一途な愛
静かな夜の街を、黒澤くんのバイクが風をきって走る。
埃っぽい倉庫に長時間いたからか、外の空気が美味しい。
横峯さんに囚われて、一時はどうなることかと思ったけど。
私も黒澤くんたちも、みんなが無事で本当に良かった。
黒澤くんの腰に掴まりながら空を見上げると、日中分厚い雲に覆われていたのが嘘のように晴れ渡り、夜空には幾つもの星が瞬いている。
「キレイ……」
「そういや栞里、初めて俺がバイクに乗せたときも、星空や街の景色を見てキレイだって呟いてたよな」
えっ、やだ。独り言のつもりが、黒澤くんに聞こえちゃってた?
「なぁ、まだ時間大丈夫か?」
さっき倉庫を出るときに時刻を確認したら、19時を過ぎたところだった。
実は横峯さんに攫われる前に、お母さんには塾で勉強して帰るって連絡しておいたから。
「うん。少しなら、大丈夫だよ」
「良かった。それじゃあ、ちょっとだけ寄り道して帰るか」
「え?」
「お前と一緒に、行きたいところがあるんだ」