黒澤くんの一途な愛


『行きたいところがある』と黒澤くんに言われ、しばらくバイクを走らせてやって来たのは…… 見晴らしのいい、小高い丘の上だった。


「うわぁ、すごい」


目の前に広がるのは、キラキラとした夜景。


それを目にした私は、感嘆の声をあげる。


「こんなところがあったなんて……私、知らなかった」

「良い場所だろう?」

「うん」


宝石箱をひっくり返したような街明かり輝く景色を眺めながら、私は黒澤くんに頷く。


「ここは、俺の大事な場所なんだ」


黒澤くんの……。


そういえば黒澤くん、横峯さんとの勝負の決着がつく前に『必ず勝って、栞里に伝えたいことがある』って言ってたけど。


私に伝えたいことって、何なんだろう?


そのことを思い出した途端、心臓がバクバクと音を立て出す。


黒澤くんがわざわざ改まって伝えたいことってもしかして、彼女ができたから私との仮の恋人関係を解消したいとか、そういうことなのかな?


囚われていた倉庫から、助け出してもらって。


無事に黒澤くんに会えたときは、自分の想いを彼に伝えたいって思っていたけど。


もしそうなら私、黒澤くんに告白するどころじゃないんじゃ……?


何となく胸の辺りが苦しくなって、黒澤くんのほうに目をやると。


「……え?」

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