黒澤くんの一途な愛


黒澤くんの幼なじみ……。


南実さんの言葉に、ドクッと心臓が嫌な音を立てた。


黒澤くんにも、幼なじみとかいたんだ。


しかも、あの黒澤くんのことを、『りっくん』っていう愛称で呼ぶような……。


それだけ黒澤くんと南実さんは、小さいときからずっと長い間一緒にいるってことだよね。


「南実!?」


私が南実さんからお弁当を受け取ろうとしたとき、驚いたような顔をした黒澤くんが、校舎のほうから駆けてきた。


「あっ、りっくん!」


黒澤くんを見た途端、ぱあっと花が咲いたような笑顔になる南実さん。


「スマホのメッセージ見たけど、危ないからここには来るなって前から言ってるだろう」

「ごめんごめん。これ、りっくんのおばあちゃんから預かってきたの」


南実さんが、黒澤くんにお弁当を渡した。


「弁当! なるべくばあちゃんに負担はかけたくないから、弁当は作ってくれなくて良いっていつも言ってるのに……」

「それでもおばあちゃんは、りっくんのために作ってあげたいんだよ」


──ズキン。


なんだろう。仲良く話す二人を見ていると、胸に黒いモヤのようなものが広がっていく。

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