黒澤くんの一途な愛
「私、お弁当を届けに来たのはいいけど。校門前でどうしようって思ってたら、あの女の子が親切に声をかけてくれたの」
「えっ、栞里が!?」
南実さんと黒澤くんの視線が同時に私へと向けられ、ドキリとする。
「いっ、いえ。私は何も……」
「あなた、りっくんのお知り合いだったんですね」
「はっ、はい。クラスメイトの花村栞里です」
私は、南実さんにペコッと頭を下げる。
「クラスメイト……栞里ちゃん、もしかしてりっくんの彼女なのかと思っちゃった」
「まっ、まさか! 黒澤くんとはほんと、ただのクラスメイトです!」
「そうなんだー」
幼なじみである南実さんの前で、仮にでも黒澤くんの彼女だなんて言えなくて。
慌てて否定した私に、南実さんはふわりと微笑む。
南実さんの顔が、いま少しホッとしたように見えたのは気のせいだろうか。
私が『ただのクラスメイト』と言ったからか、黒澤くんが何か言いたげな顔で私を見ていたけど、気づかないフリをした。