姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
譲の車は近くに停めてあった。
助手席のドアを譲が開けてくれたので、迷わず車に飛び乗る。
「待って!」
恭介の声が聞こえたが、譲は運転席に座るなりすぐに発進した。
(お母さん)
田頭に頼んで母の様子を見に行ってもらった時は、忙しそうにしたいたらしい。
まさか体調が悪かったのだろうか。
叶奈は両手を胸の前で組んで、祈るように目を閉じた。
車が高速道路に入ってから、それまで黙っていた譲が話しかけてきた。
「聞かせてくれないか」
「湯浅さん」
「心配していたんだ、ずっと」
海に行きたいと言ったはずの叶奈が、約束を破ってしまったのだ。
ただ【ごめんなさい】というメッセージだけでは納得できなかっただろう。
それなのに譲は責めるでもなく、心配していたという。
「本当にすみませんでした」
「謝らなくてい。ただ、知りたいんだ。何があったのか」
譲の声はとても優しかった。
「話してくれないか」
その静かな口調は、叶奈の心に響いた。
「好きな子が突然いなくなったんだ。気になって当たり前だろう」
今、好きって聞こえた気がすると、叶奈はぼんやりと受け止めた。
初めて聞いたその言葉のうれしさより、叶奈は譲の真剣さに心を打たれていた。