姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です


「会いたかった」
「ん? 大将にか?」

「あなたに」

叶奈が正直な気持ちを伝えると、譲はうれしそうに笑った。

「お互い同じ気持ちだったんだな」

叶奈がコクコクとうなずいていると、譲の手がそっと肩にそえられた。

「俺も、叶奈に会いたかったよ」

叶奈と呼ばれるのがうれしい。スッと譲の顔が近づいてきたので、その涼やかな目元に見とれてしまう。

「大好きだよ、叶奈」

譲はいつの間にか流れていたひと筋の涙を、そっと指先で拭ってくれた。

「私も、譲さんが好き」

叶奈が小声でささやくように告白したら、譲は優しい手つきで頭をなでてくれた。
その手が頬に触れ、軽い口づけが唇に落とされた。

「ひとりでよくがんばった」

譲がわかってくれるだけで、叶奈の心は救われた。

もう一度キスしてほしくて譲を見つめていたら、どうやら気持ちが伝わったらしい。

今度は、もう少し甘いキスが始まった。

まだまだ考えなくてはいけないことが山のようにある気がするが、今はやめておこう。
譲とのひとときを楽しんで、祖父の手料理をお腹いっぱい食べて、また明日に備えよう。

これからなにが起こるかわからないが、もうひとりで悩まなくていいと思うとずいぶん気が楽になった。

譲がそばにいてくれるだけで、力が湧いてくる。
なにか困ったことが起こったときには、まっ先に譲に話せばいい。
ひとりでは答えが出なくても、ふたりならいい案が浮かんでくるかもしれない。

「ありがとう、譲さん」

叶奈の気持ちが伝わったのか、譲は「どういたしまして」というように朗らかに笑った。






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