姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
叶奈に行きたい場所を尋ねたら、海だという。叶奈が望むなら、どこにでも連れて行ってやりたい。
日本を離れる前にしっかり自分の存在をアピールしておかないと、離れている間に忘れ去られては困るのだ。
譲は叶奈に交際を申し込むつもりでいた。
これまで譲は、まじめに結婚を考えたことはない。今までデートした相手に、共に人生を歩きたい女性がいなかったからだ。
毎日変化し続ける物流の仕事をしているからこそ、叶奈のような地に足の着いた考え方をする女性にそばにいてもらいたい。
その笑顔を毎日見たいし、叶奈に癒されながら暮らしたい。
(これが、愛おしいということか)
もちろん譲は、叶奈との将来を見据えている。まだ若い叶奈を結婚という言葉で縛り付けるのは酷だろうか。
そんな迷いもあった。
(だが、このままでいいわけがない)
焦ってはいけない。今はまだプレゼントを渡すだけで十分だ。
そうはいっても意中の女性へのプレゼントとして、なにを送ればいいのだろうかと迷ってしまった。
あまり高価すぎず、さりげなく使ってもらえそうなものはないか。卒業の記念になって、シンプルなものをと思うが決め手がない。
とうとう高校生の妹にまで、こっそり意見を聞いてしまったくらいだ。
迷いに迷って、パールのピンブローチを選んだ。
これならスーツの襟もとやスカーフを止めるのにさりげなく使えて、いくつあっても邪魔にはならないだろう。
妹からはニヤニヤと意味ありげな視線を向けられたが、手に入りにくいアイドルのライブチケットで手を打った。
あれこれ詮索したがる両親への口止め料としては安いものだ。
叶奈はいずれ、この街に帰ってくる。その時こそ、正式に結婚を申し込もう。
叶奈の未来に自分はいるはずだと譲は疑ってもいなかった。