姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です



そんなとき、叶奈が大学卒業間近だと聞いて驚いた。妹と同じくらいかと思っていたと告げると、少し機嫌を損ねてしまった。
高校生に見えたというのは、さすがに失礼だったかもしれない。

大学卒業後は、見聞を広めるためにメルボルンで暮らす予定だと聞いた時には驚いた。
これまで譲の近くにいた女性たちとは、根本的に違っているらしい。
譲の妹もそうだが、大体は親の庇護下にいて何の苦労もなく暮らしている。
その豊かな生活は当然のことだと、疑問すら感じていないはずだ。

叶奈には誰かに支えてもらったり、力のある人に頼ったりするという発想はなさそうだ。
意地っ張りと言えばそれまでだが、前向きな姿勢には好感が持てた。

叶奈を好ましいと思いながらも、もっと深い付き合いを求めるのには抵抗もあった。
譲に対して、叶奈は店の客たちと同じ節度ある振る舞いを崩さない。
それに譲のことも、たまたま仕事でこの街に来た客のひとりとしか思っていなさそうだ。

だが春になったら彼女とは会えなくなると知ってから、譲は焦りを感じ始めた。
彼女とゆっくり話す時間は、あまり残ってないのだ。
せめてふたりだけで過ごしたくて「卒業祝いに出かけよう」と誘ったら快諾してくた。

(嫌われてはいない、むしろ……)

叶奈のうれしそうな様子からは、好意さえ感じられた。


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