姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です




「もしかして、お見合いが嫌で帰ってこないのですか」

麻子はまだ動揺しているのか、声が震えている。

「まさか。ずいぶん前から決まっていたのよ。それに奈緒はおとなしくていい子だし、これまで私たちに逆らったことはありません」

「では、お相手の方が嫌だったとか」

「とんでもない。理想的な結婚相手よ」

見合いして結婚するものだと決めつけている琴子に対して、叶奈はますます不信感を抱く。

「奈緒には崇のようになってほしくなかったの。ねえ」

そう言って崇を見る琴子の声には棘があった。
それ以上に崇と麻子が苦い顔をしているので、どうやらふたりの過去も関係しているようだ。

「お見合いして結婚することを、奈緒は受け入れていたとおっしゃるのですか?」

琴子に問いかける麻子の声は震えている。

「ええ。幼い頃から、あなたはお見合いして結婚するのよって言い聞かせていたの。お相手は優秀なお医者様だし、断る理由はないでしょう」

「ひどい!」

思わず叶奈は叫んでしまった。
どんなに相手がいい人だったとしても、祖母は幼いころから姉に自分の考えを刷り込んできたのだ。
おそらく「お見合いして結婚しなさい」「自分の選んだ相手に間違いはない」と言い続けてきたのだろう。

叶奈はさっき写真で顔を見ただけだが、姉に同情してしまった。
袴ですらぎこちない叶奈と違って、華やかな振袖がしっくりと似合っていた。
こんな結婚話なら、奈緒が帰国しないのも当然のように思えてくる。


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