姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です


「叶奈さん、あなたにお見合いをしてもらいたいの」
「えっ」

目の前にいる琴子の言葉が、叶奈の脳内に届かない。

「だから松尾家の孫らしく、礼儀作法を身につけてもらいます」

「あの、おっしゃっている意味がわかりません。どういうことでしょうか」

ぼうぜんとしている叶奈に変わって、麻子が尋ねる。

「奈緒がね、家出したんだ」

琴子が崇の方に、黙ってというようにスッと手を伸ばした。どうやら知られたくなかったようだ。
だが崇は「隠し事いけない」と、叶奈にもわかるように説明してくれた。

奈緒は大学に入ってから、松尾家の屋敷ではなく都内のマンションで生活していた。
卒業後はアメリカに語学留学しており、この春には帰国するはずだったのに、まだ帰ってこない。

「無事なんですか!」

麻子も初めて聞いたのか、奈緒の安否を心配している。
だが、琴子も崇もあっさりした反応だ。

「ロサンゼルスにいるのはわかっているし、口座からお金を下しているのも確認している」

叶奈はますます困惑する。それを家出というのだろうか。

「もうすぐお見合いする予定だったから、帰ってこなくて困っているのよ」

つまり言うとおりに帰国しないから、この家の人たちは姉が家出したと決めつけているようだ。

琴子は「お見合い」と簡単に言うが、叶奈は信じられなかった。
ひとつ年上の姉が、もうお見合いするなんて驚きでしかない。



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