姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
すぐに帰れると思っていたのに、まさかの事態になってしまった。
叶奈は、母に内緒で譲と約束していた事だけが気になった。
伝言を頼もうかと思ったが、これ以上は母に負担をかけたくない。
(湯浅さん、約束を守れなくてごめんなさい)
麻子を見送ると、崇は仕事があるからと会社に戻っていった。
琴子は自室に引っ込んでしまい、叶奈は宙ぶらりんな状態だ。
応接室でぼんやりしていたら、先ほどの家政婦らしい人がやってきて客室へ案内してくれるという。
「こちらのお部屋をお使いください」
叶奈が生まれた家とはいえ、今では客扱いなのだ。
ここはバストイレ付き、簡単なクローゼットには下着や着替えまで用意されていた。
琴子は叶奈が断れないとわかっていたのかと思うと、叶奈はなんだか悔しくなってきた。
「お着替えをお手伝いいたしましょうか」
「お願いします」
袴姿のままでは、くつろぐこともできない。家政婦の手で、手早く着物を脱がされていく。
今ごろ祖父母は、どんな思いで待っているだろう。
(海に行きたかった)
港のある横浜にいるせいか、ふたりで出かける約束を守れなかったことが切ない。
叶奈は深いため息をついた。