姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です




ふと叶奈が窓の外に目をやると、まだ外は明るい時間だった。
今日は朝早くから着付けをしたし、卒業式が終わってバタバタしたせいか急に疲れを感じた。
それは麻子も同じだろう。わずか一日でげっそりとやつれて見えた。

話がまとまったので、母は田頭が家まで送って行くという。
崇自身が送りたそうにしていたが、松尾家に残される叶奈のことも気になるらしい。

崇は麻子と叶奈の間で視線をウロウロと動かしている。
麻子はただ黙って、崇をじっと見ていた。

ふたりの様子を見た叶奈は、なんとなく憎みあって別れたのではないように感じた。
すでに男女の愛情はないのかもしれないが、子を持つ親としての繋がりだけはあるようだ。

「では、気をつけてお帰りなさい。加奈の部屋を準備させます」

そう言って琴子が部屋を出て行ったタイミングで、麻子が叶奈に小声で話しかけてきた。

「あなたには自分の意見を堂々と言える子になってほしかったけど、ここでは控えてね」

琴子との関係が悪化することを心配したのだろう。

「言っていいことと悪いことがあるの。時と場合によっては、我慢することも大切だって覚えてちょうだい」

なんとなく麻子の気持ちがわかったので、叶奈は黙ってうなずいた。



< 44 / 125 >

この作品をシェア

pagetop