姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です

(海に行きたかったな)

せっかく卒業祝いに出かけようと誘ってくれたのに、海に行く約束は守れなかった。
譲の顔を見たい。せめて声を聞きたいと思うが、この状況になった事情は話せない。
それに播磨屋への援助のかわりに見合いを引き受けたという責任感が、叶奈を松尾家に縛り付けていた。

前に譲からもらった名刺だけは、お守りのようにお財布に入れていた。
教えてもらったアドレスに【ごめんなさい】とだけメッセージを送った時には、泣きたくなってしまった。

自分で奈緒のスペアになると決めたはずなのに、つい弱気になってしまう時もある。
譲とは毎日のように顔を合わせていたから、会えない日が続くと気分は落ち込む。
好きな人の顔を見るだけで幸せな気持ちになれたのに、今はそれすらもないのだ。

(いつになったら解放されるんだろう)

まだ見合いの日程は決まらないらしい。
叶奈は早くいつもの暮らしに戻りたかった。

(湯浅さんに会いたい)

叶奈はこんなにも譲に恋していたんだと、あらためて自覚した。




< 47 / 125 >

この作品をシェア

pagetop