姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です

横浜の家にいた間に買いそろえてもらった服や小物などで、思ったよりも荷物は増えていた。
叶奈は田頭が運転する車で、マンションに向かう。

そこは思っていたより大きなマンションで、奈緒の大学まで近いし周りは静かで立地条件もいい。
セキュリティーはしっかりしているようで、女性のひとり暮らしでも安心な物件だがお値段も高そうだ。

地下の駐車場に車を停めて、田頭に着替えなどの入った大ぶりのスーツケースを運んでもらう。
その姿は海外旅行から帰ってきたばかりのお嬢様に見えるだろう。

奈緒の部屋はひとり暮らしとは思えない広さだった。
あまり触ってはいけないと思い、寝室やクローゼットは避けて玄関にほど近い狭い部屋を使うことにした。
このひと部屋とリビングやキッチン、バスルームくらいを使わせてもらえば生活できそうだ。

(この部屋で、奈緒は何を考えていたのだろう)

よく見たら全体のイメージはシックな印象で、ベージュの壁に木目調の家具といったインテリアだ。
横浜の家のように豪華でもなく、ヒラヒラとかわいい雰囲気でもない。
こちらのほうが、奈緒の本質のような気もする。

やっとひとりになれた。奈緒もここでは同じ気持ちだった気がする。
叶奈は自分を取り戻せたようで、少しだけ自由になれることだけは素直に喜ぼうと思った。









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