姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
「このまま、お話がまとまるといいわね」
「そんな!」
叶奈はこれ以上は無理だと言い張ったが、恭介とお付き合いしてみればいいと琴子は簡単そうに言う。
想像したくもないが、今に恭介と結婚しろと言いだすかもしれない
「ドレスなどは用意しておくわ。あなたは、松尾家の恥にならないように振舞ってちょうだい」
琴子が色々と気を使ってくれるのは、叶奈のためというより松尾家の体面を守るためのようだ。
ドレスや靴、それにバッグ、アクセサリーまで揃えたら結構な金額になる。
先日の着物といい、これ以上は金銭的な借りを作りたくなくて、ほどほどにしてと頼んだが琴子には無視された。
パーティーの当日は美容室の予約を入れておいてくれるそうだ。
叶奈ひとりで髪を整えたりメイクするのは無理だと琴子にはわかっていたのだろう。
「田頭に迎えに行ってもらうから、美容院やパーティー会場まではうちの車に乗っていきなさい」
「わかりました」
琴子が馴染みの店に注文してくれたドレスは、パーティーの前日にマンションに届いた。
短期間だからオーダーではないけれど、凝ったデザインのものだった。
ハイウエストの切り替えで緩やかなシルエットがスラリとみせてくれるし、上半身に使われている繊細なコードレースが華奢な叶奈によく似合う。
叶奈はこれまで華やかなものは似合わないと思い込んでいたが、このドレスは違った。
初夏らしい若草色が叶奈のイメージに合っていて、服に着られている感じもしない。
『楽しんでいらっしゃい』
メッセージカードにはいつになく優しい言葉が書かれていて、叶奈は少しは孫として認められた気がした。