姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です



マンションの周辺を歩いていたら、表通りから一本裏に入った通りに居心地のよさそうなカフェを見つけた。
レンガの外壁が目印のようで、壁に沿ってツタが絡まっている。
今は緑が鮮やかだが、秋に色づいたらパリの裏町のような雰囲気になりそうだ。

そういえば喉が渇いたなと思って、叶奈は店に入ってみることにした。

外からはシックなイメージだったが、壁や家具は白っぽくてかわいらしい。
それに窓辺の観葉植物の緑がホッとさせてくれる。
メニューは飲み物やサンドイッチ、トーストが数種類とパンケーキくらい。
ひとりの気安さから、叶奈はカウンター席に座ってカフェラテを頼んだ。

「どうぞ」

目の前には、思ったよりも大きなカップが置かれた。
ラテアートは愛らしい猫の顔だったので、つい店主の顔をしげしげと見てしまった。

六十手前くらいだろうか。
短くきちっとそろえた髪、ラテアートとイメージがそぐわない大柄な体型、眼鏡の奥の目は少し垂れていて優しそうだ。

こぼさないようにそっとカップを持って口に運ぶ。
柔らかなミルクの香りとコーヒーのふくよかな香ばしさが鼻の奥に広がった。
甘いものがささくれた気持ちを癒してくれそうだ。

「おいしいです」
「それはよかった」

店主の目尻がまた下がったように見える。







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