姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
「あれじゃ近寄れそうにないね。しばらくこっちで楽しもう」
楽しもうと言われても、叶奈にとっては別世界だ。
女性たちはメリハリのあるボディーだし、男性の肉体美も間近で見たことがないから目のやり場に困る。
デッキチェアーに座って、トロピカルドリンクを飲むのがせいぜいだ。
話題がなくて困っていたら、恭介から話しかけられた。
「君に頼みがあるんだ」
「なんでしょう」
「奈緒さんは、とうとうアメリカから帰って来なかったんだね」
「えっ?」
「ごまかさなくていいよ。知ってるから」
事情を知っていたから、恭介はお見合い相手が叶奈に代わっていても表情を変えなえかったのだ。
「松尾家との縁談は、ずいぶん前に決まっていた」
どうやら恭介も、祖父が幼なじみと交わした約束を知っていたようだ。
松尾家の孫娘と見合いして結婚しろと言われ続けていたのだろう。
「だから奈緒さんと結婚するのかなって、ずっと思っていたよ」
「姉をご存じだったんですか?」
恭介はゆっくりうなずいた。