姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
「松尾の家では奈緒さんのことなんて言ってる?」
「わかりません。私にはなにも話してもらえないので」
叶奈はどこまで行っても部外者だし、単なるスペアなのだ。
「まさか見捨ててはいないだろうが……だからこそ、君に頼みたい」
「あの……」
恭介の唇が少し歪んだ気がする。
「しばらく婚約したことにしてくれないか」
「どうしてですか?」
「こっちにも事情があるんだ」
見合いの席に来なかった恭介の祖父は、病に倒れているという。
琴子には伝えていないが手術を受けて入院中だし、本人が医者とあって病状の誤魔化しはきかない。
琴子と恭介の祖父は若い頃に婚約寸前の関係だったのに、お互いの家の事情で琴子は松尾家に嫁がされた。
だからふたりは夢は、いつかお互いの子か孫を結婚させることだった。
せめてうそでも約束を叶えたように思わせて、安心させてやりたいと恭介は苦しそうに話す。
叶奈も遠藤の祖父母の店を守るために見合いを引き受けたくらいだから、恭介の思いはよくわかる。
病床の祖父に、願いが成就したと思わせたい。そのために奈緒がいない今、叶奈が必要なのだ。
婚約者のフリをして、祖父に会ってほしいと言う恭介は真剣だ。