姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です




車がマンションに着く頃には日が傾き始めていた。

「姉には、早く帰ってきてほしいです」

夕陽を見ながら、叶奈はポツリとつぶやいた。

「それだけは、同じ気持ちだね」

そもそも奈緒と恭介はとっくに出会っていた。
一夜を過ごした相手だからと逃げ出したなら、それだけ意識していたということではないか。
ふたりはきちんと会って、お互いの気持ちを話し合うべきだ。

「どうしてこんなことになったんでしょう」
「僕のせいだよ。できるなら最初からやり直したいくらいだ」

淡々と答える恭介だが、きっと内心では熱い気持ちが渦巻いていることだろう。
ふたりをつなぐ真っ直ぐだった赤い糸は、絡まってごちゃごちゃになっている。
奈緒さえ帰ってきたら、うまく解けるはずだと叶奈は思った。

車がマンションに着いた。

「送ってくださって、ありがとうございました」

あいさつして叶奈が助手席から降りようとすると、マンションの入り口から走ってくる人が見えた。

「叶奈さん!」

名前を呼んだのは譲だった。迷わずこちらに駆け寄ってくる譲は、かなり焦っている様子だ。

「電話しても繋がらないから、迎えに来た」

そういえば病院に行ったから、スマートフォンはマナーモードにしたままだった。
迎えに来たと言われても、今の自分は恭介の婚約者のフリをしている最中だ。
どうしてここに譲がいるのか、なぜ迎えに来てくれたのかわからない。



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