姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
約束した土曜日、マンションに迎えに来てくれた恭介とともに香川総合病院へ向かう。
特別室に入院している恭介の祖父は、叶奈が顔を見せるととても喜んでくれた。
「どこか琴子さんに似ていますね」
懐かしそうに微笑みながら見つめられると、叶奈はやましさもあって胸がドキドキする。
「そうでしょうか」
「あの人も、若い頃はあなたのような元気いっぱいの表情をしていましたよ」
今の威厳ある琴子からは想像もできない。
恭介の祖父は優しそうな目をした人で、厳ついイメージの祖父とは真逆のタイプのようだ。
誰にだって若い日があるはずだが、目の前にいる人と琴子が恋をしていたとは想像できない。
「恭介と末永く仲よくしてください」
「は、はい。もちろんです」
「よかった」
おそらく恭介の祖父は重病なのだろう。
ずいぶんと面やつれしている人に、偽りの言葉を告げるのは心苦しい。
またうそを重ねてしまった叶奈は、微笑むのが精一杯だ。
医者として誰よりも病状がわかっているはずの恭介は、穏やかな表情を一瞬たりとも崩さなかった。
さすがだなと、叶奈は恭介を見直した。
病院を後にして、送りがてら何か食べるかと恭介に聞かれたが叶奈は断った。
「さすがに疲れました」
今日は上品そうに見えるよう髪型や化粧にまで気を使っているし、ずっと微笑んでいて頬の筋肉が痛くなってきた。
「そうだろうね。今日は君ががんばってくれて助かった」
「なんだか、ものすごくいけないことをしている気分です」
「祖父はすごくうれしそうだったから、いいことだよ」