大嫌いな王子様 ー後編ー

ポンッ

和希くんが私の頭を撫でてくれる。
すごく優しく。


「それが聞けてよかった」

私も和希くんに言えてよかった。


「俺はきちんとフラれたってことね」

「それはー…!!」

「嘘嘘♪てか、バイト大丈夫なん?時間ヤバくない?」

「わぁー!!走らなきゃ!!」


時間を見て猛ダッシュで家を出る。


「でも伊織遅いからなぁ〜」

「和希くん、引っ張ってー!!」


そのまま、アルバイト先まで和希くんがついてきてくれた。
和希くんに引っ張ってもらい、なんとか間に合ったがしばらく汗だくでレジをしたのは言うまでもない。



————————————


「暁斗坊っちゃま、旦那様より優聖大学に進学し在籍のままアメリカに留学をとご連絡いただきましたが、こちらの流れで手続きをさせていただいてよろしいでしょうか?」

「なんでもいい。任せる」


いおと別れてから、自分の進路なんてどうでもよくなっていた。
どうせなにも自由に出来ない。


10月も、もうすぐ終わろうとしてる。
今まで1ヶ月ぐらい会えないとかあったけど…そんなの比べ物にならない。

だって、もういおと俺を繋ぐ関係性がなにもないから。



「坊っちゃま、本日伊織様が急遽アルバイトをお休みされたそうです」

「は…?なんで!?」

いおが当日に休むなんて。
なにかあったのか!?


「どうやらご体調を崩されたようで…。学校も早退しているようです」

風邪か?
すぐそばに行きたいのに…


「飯田、悪いけどいおの家に…」

俺から別れてくれと言ったのに
なにかしたら、いおを困らせるだけかもしれない。

これもただの自己満足だ。


「いや、なんでもない」


「坊っちゃま、私は良いと思います」


俺はなにも言ってないのに、飯田は俺が言いたいことがわかったように言葉を続ける。


「お別れになったとしても、それは無視をしたりずっと会わないとは意味が違うと思います。伊織様になにかあったなら…心配して当然です」


「そう…だな。じゃあ、ちょっと頼みたいんだけどー…」

ーーーーーーーーー


ピピッ
体温計を見ると38.6度。
うわー。久々の風邪、しんど過ぎる。


「ゴホゴホッ」

咳も出てさらにしんどい。


「伊織、おかゆ食べれそう?」

「んー…今はいいや。ありがとう」

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」


とにかく寝よう。
コンビニにも迷惑かけてしまったし、早く治さなきゃ。

眠りかけた時にインターホンが鳴ったのが聞こえた。




「う…ん」

おでこあたりに冷たいなにかを感じて目を覚ました。


「あっ起こしちゃった?」

「お母さん…」

目を覚ますとお母さんがいて、おでこに冷却シートを貼ってくれていた。


「あれ…家にあったっけ?」

「さっきね、飯田さんが届けてくれたのよ」


飯田さんが!?


私は急いで起き上がる。


くら…

急ぎすぎたせいか、頭がくらっとした。


「もう。まだ寝てなきゃダメよ。熱も下がりきってないんだし」

「だって飯田さんが来たって…」

「そうね、気になるわよね。1時間半ほど前に来てくれたわ」


もしかして、寝る前に聞こえたあのインターホンが…


「飯田さんは…ひとりだった?」

こんなこと、聞いても仕方がないのに。

「ええ」

やっぱり。
そりゃそうだよね。


「ねぇ伊織。暁斗さんとなにがあったの?」


もう隠せないよね。
というより…お母さんに聞いてほしい。
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