大嫌いな王子様 ー後編ー
廊下を歩きながらスマホを見ると、暁斗くんと和希くんから心配のメッセージがきていた。
「いお!」
前から暁斗くんと佐伯くんがやってきた。
「大丈夫か?」
「伊織倒れたからビビったよ」
「心配かけてごめんね。全然大丈夫だよ」
しーーーん
微妙な間が続く。
「佐伯くんだっけ?今空いてんの?」
沈黙を破ったのはみっちゃん。
「え?あぁ」
「じゃあ後夜祭案内してよ。伊織、あとで連絡してー」
「みっちゃん!?」
「ちょっ…おい!」
返答する前に手を引っ張られ連れて行かれる佐伯くん。
みっちゃん…私のためだ。。
ありがとう。。
みっちゃんのおかげで暁斗くんとふたりきり。
「あのね暁斗くん、さっきのことなんだけど…」
「立花?だっけ。アイツのためなんだろ。和希に聞いた」
「う、うん」
知ってたんだ。
奥から人がやって来た。
「ちょっとこっち来い」
連れてこられた場所は空き教室。
開いてる窓から少し冷たい風が入ってくる。
「暁斗く…」
名前を呼びきる前に抱きしめられた。
「倒れてマジビビった…大丈夫なんだよな?」
「心配かけてごめんね。全然大丈夫だから」
目の前の出来事に頭がパニクってオーバーヒートしたとは言えない。。
「コンテスト…カップルの設定で出ちゃってごめんね」
「なんで謝んの?」
えっと…
「暁斗くん怒るかなって思って…」
「は?事情わかったら怒んねぇよ。そんな短気じゃねぇし」
あ、逆に今ので怒らせたかも。
「でも…やっぱ妬くかな」
暁斗くんの言葉と表情にドキドキが加速していく。
「髪…似合ってる」
わぁ。。嬉しい。。
「えへへ…ありがとう」
暁斗くんが私のほっぺに触れる。
「ここ?アイツがキスしたとこ」
ドクンッ
なんでそんなこと聞くの?
「えっと…あのー……」
チュッ
触れてたほっぺに暁斗くんがキスをした。
「上書き」
ほんとはすごく怒ると思ってた。
コンテストのことも、和希くんのキスも。
だけど全然違って、優しくて少し悲しそうな表情の暁斗くんが目の前にいる。
ぎゅう
「暁斗くん、大好きだからね!」
なんか…すごく伝えたくなって暁斗くんを抱きしめて伝えた。
「…知ってる」
あ、いつもの強気な暁斗くんだ。
「和希くんにも…ちゃんと言ってるからね?暁斗くんが大好きだって」
バタバタ…
「えぇー!ここに置いたの!?」
外から足音と人の声がする。
ヤバイ、人きちゃう!
ガラッ!
「ここないじゃん」
「ごめーん。あっちだったー」
人が去っていく。
ふー…
「いお…意外と大胆だな」
「へ!?」
私は咄嗟に暁斗くんを引っ張り教壇の下に隠れた。
狭い空間にふたりきり。
「違うし!隠れるためだし!」
急いで立ちあがろうとしたら止められた。
「あと少しここでもいいんじゃね?」
はぁぁ!?
「なんか変なこと考えてる!絶対!!」
「なに、変なことって?」
「はぁ!?うるさいー!」
「あ?お前が言ったんだろ」
暁斗くんが私の両頬を片手で掴む。
「ほかの奴に隙見せんな。触られんな」
ドキドキがうるさい。
暁斗くんにバレちゃうんじゃないかな。
「俺だけ見てろ」
言われなくても見てるもん。
キスをしようとしたら、暁斗くんのスマホが鳴った。
「あ?なんだ?」
おぉー。機嫌悪さMAX。
「後夜祭のイベント始まるぞ!伊織連れて早く来い」
電話は佐伯くんだったらしい。
「みっちゃんも待ってるし行くか」
「うん!急いで行こ!」
手を繋いでみっちゃんたちの元へ急ぐ。
「暁斗くん、お嬢様ってもう一回呼んでほしいです」
「一生言わねぇ」
「ケチ。ドケチ」
「テメェ、もっぺん言ってみろ」
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その頃の和希。
「雑用ばっかウザイって」
「和希、コンテストに出て仕事サボったじゃん!その分頑張れよ」
「俺、無理矢理出されたんだって!」
伊織〜!会いたいよー!!!