名も無き君へ捧ぐ
想いのたけ
翌朝、目を覚ますと体のダルさがなくなっていた。
一夜で回復してしまったのだろうか。
うーんと背伸びをする。
うろ覚えの記憶を辿る。
ビールを飲もうとして冷蔵庫の前で倒れてベッドに入って、冬弥に色々言われた気がする。
でも、やっぱり、「ごめんなさい」という言葉が一番残っている。
夢だったのだろうか。
朝になると、どこからともなくふらっと現れる冬弥。
何となく、今日は呼びかけるのが気まずい。
リビングに向かうと、早速冬弥の姿があった。
テーブルに置いてあるものを見つけてギョッとした。
「それ!!」
冷蔵庫にしまってあった、バレンタインのチョコだ。
箱の中身は空っぽ。
「あ、おはようございます。もう大丈夫なんですか?」
「う、うん。てか、それ、どうしたの?」
顔が思いっきり引きつっている。
彼は満面の笑みを浮かべながら言う。
「いただいちゃいました。すごく丁寧にラッピングされてたんで、あれかなと思ったんですが。誘惑には勝てませんねー。美味しかったです。特に苺ソースが入ってるチョコが、甘酸っぱくてチョコとの相性抜群です」
「いやいやいや、ユーレイが誘惑に負けるんかい!食レポしなくていいから」
私はへなへなと頭を抱えてうずくまる。