名も無き君へ捧ぐ

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こんにちは


突然メール失礼します


今日夜、ご飯行きませんか?


ご予定があれば大丈夫です

ご連絡お待ちしています


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「ふぁ?」


カラカランッ


びっくりして箸を落とした。



周囲が一斉にこちらを見る。



「戸塚さん、どうしたの?」


「あ、いえ。何でもありません....」



箸を急いで拾うと、肩をすぼませながら椅子に座り直す。



(こ、こ、これって、これこそ、俗に言うデートなのでは??)


相模さんのメッセージを何度も何度も見返す。


あの本屋での1件から間が空いて、取り留めのないメッセージのやりとりだけで会ってはいない。


(普通に、ご飯行くだけだよね。深い意味とかないよね)


パンケーキはたまたまだったし、約束をして食事なんていつぶりだろうか。


断る理由などない。

ないけれど、冬弥のことがどうしても脳裏をよぎる。


冬弥がいたらきっと、断っていたかもしれない。


断ったら断ったで冬弥はガミガミ言って来そうなのだが。




このままでいい。

このままでいたい。


でも本当は分かってる。


今ある時間は、永遠ではない。


不思議な時間は続かない。



分かってる....。








呼吸を整えてからゆっくり文字を打ち返信をした。

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