名も無き君へ捧ぐ
言霊
雨の音で目が覚めた。
ようやく春の兆しを感じていたのに、冬に逆戻りの寒さだ。
目を擦り欠伸をしながらカーテンを開ける。
土砂降りではないけれど、しっかり降っている。
窓に幾度となく滴れる雫。
冴えない顔の自分の顔がぼんやり窓に映る。
冬弥が留守になり3日目。
その日のうちに終わると思っていた先祖会議。
ふらっと帰ってくるのではと、ついキョロキョロと姿を探してしまう。
本当はとっくに帰ってるのに、霊感が薄くなってるせいで見えにくくなってるのかもしれない。
なんて、考えてみたりもした。
いずれにせよ、妙な焦燥感が渦巻く。
この爆弾低気圧のせいで、頭痛がする予感がして余計に憂鬱になる。
(冬弥がいたらな....)
頭痛を和らげる方法は、ひいお爺さんの場合だと普通に手をおでこにかざすものだった。
内心ほっとしていたのは秘密だ。
ひいお爺さんは冬弥のように頻繁に姿を見せる訳ではないので、久しぶりに一人暮らしをしているのを実感。
それが今まで普通だったのに。
会社のデスクで昼食を取っているとき、携帯のメッセージアプリに連絡が入った。
送信相手は相模さんだった。