名も無き君へ捧ぐ
はじまりの歌
出会い
穏やかな春の昼下がり。
小さな丘の上で女の子が2人、シロツメクサで花かんむりを作っていた。
「汐里ちゃん!出来たよー」
「すごい、上手だね!私まだ全然進んでない」
「もっとたくさん花使った方がいいよ」
「そっか、じゃあまた探しいこう」
「待って!私も行くー」
丘を駆け足で下っていく。
途中転びそうになりながら、笑いながら。
「あった!これとこれと....、あれ?」
汐里はシロツメクサの隣に咲く、小さな小さな水色の花に気づいた。
よく見ると、その花は周辺にたくさん咲いていた。
「小さくてかわいい!」
「なに?どうしたのー?」
後を付いてきた園子が急いで見に行く。
「見て見て!すっごい小さい花見つけた!」
1輪だけ摘むと、手のひらに乗せた。
「わー!本当に小さい。よく見つけたね」
「綺麗な水色。私この色好きー」
「名前なんていうんだろうね」
「さあ?分かんない。明日先生に聞いてみよう」
「そうだね!」
「もっと探そう!この花」
「うん!」
気がつけば花かんむりそっちのけで、小さな花を日が暮れるまで探していたのだった。