【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 召使学科楽しいわぁ……。きっと、わたくしの性分に合っているんだわ。

 ……あら?

「ごきげんよう、クロエさま」
「カミ……いえ、ごきげんよう、マーセル嬢」

 廊下を歩いていると、クロエに会った。授業にはまだ早いし、少し聞きたいことがあったから、少し彼女の時間をいただくことにした。人気のない場所へ足を進め、ぴたりと足を止める。

「クロエ、『マーセル』が昨日なにをしたのか知っていて?」
「……なんというか、その、すごかったです」
「どうすごかったのか、教えていただける?」

 わたくしは『マーセル』のことを知らない。だからこそ、昨日彼女がどんな行動をしたのかもわからない。

 知っているといえば、プラチナブロンドでサファイアのような瞳を持っていることくらい。そして、マティス殿下の恋人であるということ。

 クロエは、とてもしぶしぶとした表情で教えてくれた。

 昨日、魔法が使えなくて慌てた『マーセル』は、体調不良だと嘘をついて授業を見学した。どうやら、わたくしの身体でも魔法が使えないみたいね。不思議だわ。

 魔力はこの国のすべての人が持っているのに……低すぎて使えないのか、高すぎて使えないのか、どちらなのかしらね。

「ベネット公爵夫人が、大変お怒りになられて……」

 きっと先生から連絡がいったのね。

 お母さまは、わたくしを隙のない完璧な公爵令嬢にしようと奮闘していた方だから……。隙のない人間なんて、いないと思うのだけど。

 息が詰まるような生活だったから、わたくし、この状況を楽しんでいるのよね。
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