【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
お母さまは間違いなく怒り狂うだろうから、明日ちゃんと学園に登校できるかも怪しい。
両肩を上げてゆっくりと息を吐く。
公爵家の令嬢――カミラ。それがわたくしの名前。
生まれたときからの婚約者、マティス殿下とはあまり良い関係を築いているとは言えない。
だって、彼はこのレフェーブル学園で男爵家の令嬢、マーセル――この身体の持ち主と、付き合い始めた。
わたくしと彼が出会ったのは三歳の頃。両親と一緒に王城まで足を運んだ日……婚約者として紹介された。そこから、わたくしの地獄が始まったのよねぇ。
マティス殿下は第一王子だから、彼を支えられる人になりなさいって。いろんなことを叩き込まれたのよね。できなかったら失望のまなざしを向けられたり、『その程度のこともできないの?』と責められたりとなかなか大変だったわ。
――さて、彼女はどのくらい耐えられるかしらね?
「マーセル、ここにいたのか……!」
教室の扉が開いて、マティス殿下が笑みを浮かべながらわたくしに……いいえ、『マーセル』に近付いてくる。
マーセルを前にすると、そんな優しい表情を浮かべられるのね。なんだかいろいろと複雑な気持ちだわ。
「大丈夫かい? カミラにいじめられなかった?」
こんなに甘い声で……マーセルとは話すのね。『カミラ』の前とは大違い。
彼のことは好きでも嫌いでもないと思っていたけれど、もはやどうでもいいに変わっていったのは、入学してからあっという間だったわ。
「大丈夫ですよ。ただ、お話をしていただけですもの」
「そうかい? ……まぁ、きみがそう言うのなら、信じるよ」
そっとわたくしの頬に……いいえ、この身体の持ち主はマーセルだったわ。
マーセルの頬に触れて愛おしそうに目元を細める彼に、わたくしは頭が痛くなってきた。
婚約者がいながら、『マーセル』と恋人になった彼の考えがまったくわからない。
「階段から落ちたんだ。医者に診てもらおう?」
「え、ええ……」
わたくしに対する態度と、『マーセル』に対する態度があまりにも違いすぎて引いてしまう……のは、仕方ないことよね?
両肩を上げてゆっくりと息を吐く。
公爵家の令嬢――カミラ。それがわたくしの名前。
生まれたときからの婚約者、マティス殿下とはあまり良い関係を築いているとは言えない。
だって、彼はこのレフェーブル学園で男爵家の令嬢、マーセル――この身体の持ち主と、付き合い始めた。
わたくしと彼が出会ったのは三歳の頃。両親と一緒に王城まで足を運んだ日……婚約者として紹介された。そこから、わたくしの地獄が始まったのよねぇ。
マティス殿下は第一王子だから、彼を支えられる人になりなさいって。いろんなことを叩き込まれたのよね。できなかったら失望のまなざしを向けられたり、『その程度のこともできないの?』と責められたりとなかなか大変だったわ。
――さて、彼女はどのくらい耐えられるかしらね?
「マーセル、ここにいたのか……!」
教室の扉が開いて、マティス殿下が笑みを浮かべながらわたくしに……いいえ、『マーセル』に近付いてくる。
マーセルを前にすると、そんな優しい表情を浮かべられるのね。なんだかいろいろと複雑な気持ちだわ。
「大丈夫かい? カミラにいじめられなかった?」
こんなに甘い声で……マーセルとは話すのね。『カミラ』の前とは大違い。
彼のことは好きでも嫌いでもないと思っていたけれど、もはやどうでもいいに変わっていったのは、入学してからあっという間だったわ。
「大丈夫ですよ。ただ、お話をしていただけですもの」
「そうかい? ……まぁ、きみがそう言うのなら、信じるよ」
そっとわたくしの頬に……いいえ、この身体の持ち主はマーセルだったわ。
マーセルの頬に触れて愛おしそうに目元を細める彼に、わたくしは頭が痛くなってきた。
婚約者がいながら、『マーセル』と恋人になった彼の考えがまったくわからない。
「階段から落ちたんだ。医者に診てもらおう?」
「え、ええ……」
わたくしに対する態度と、『マーセル』に対する態度があまりにも違いすぎて引いてしまう……のは、仕方ないことよね?