【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 ――わたくしは、思わずレグルスさまを凝視してしまった。彼はこちらをじっと見ている。

 ……どういうことなのかしら? と困惑した表情を浮かべると、レグルスさまは頬をかいた。

「カミラ嬢のことは、前から知っていた。きみが努力家なことも知っている。だが、きみはマティス殿下の婚約者だ。俺が声をかけても、困らせるだけだと思っていた。……しかし、もう状況が違う。俺はきみが元の身体に戻れるように協力する。マティス殿下と婚約を白紙にしたあとなら、我が国に連れ帰っても問題あるまい?」

 わたくしが、レグルスさまと……?

 それはつまり、わたくしがリンブルグ王国の国母になるということ? いえ、待って。ちょっと待ってちょうだい。彼がわたくしのことを、前から知っていた?

 確かに数年前、一度お会いしたことがある。だけど、それはほんの一瞬だったはずよ。

「ダメだろうか?」

 顔を覗き込まないでほしい。マーセルの顔だけど、絶対に赤くなっている。

 ――だって、彼はわたくしが努力していたことを認めてくれたのだ。思わず、扇子を取り出して広げ、顔を隠す。

 レグルスさまは目を(またた)かせてから、ふっと微笑んだ。
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