【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
嘘でしょう? これは夢なの……?
「わ、わたくし、あなたのことを全然知らなくてよ……!」
「知っている。それは、これから知っていけばいいことだろう? 俺はどうしても、カミラ嬢がいい」
そんなことを言われると、心が揺れ動く。
思えば『わたくし』を求めてくれる人なんて、いなかった。
家族も、婚約者も――……
わたくし、こんなに単純だったのかしら? ――でもね、すごく、すごく嬉しくて――同時に切なくなった。
――ああ、わたくし、こんなにも愛に飢えていたのね――って。
「も、元の身体に戻ってから、考えさせてください」
「良い返事を、期待している」
甘くささやかれて、頬が熱い。なにか言葉を紡がなくては、と口を開くと、バンっと屋上の扉が開いた。
そこにいたのはマティス殿下だった。……どうして、彼がここに? 目を丸くして彼を見ていていると、その視線に気付いたのか、マティス殿下がわたくしに気付いて表情を綻ばせた。……魔法を解いて、彼の言葉を待つ。
「こんなところにいたのか、マーセル。探したよ」
「殿下、マーセル嬢にあまり近寄らないでくださいと、お伝えしたはずですが……?」
クロエが眉をひそめてマティス殿下に声をかける。そんな彼女の言葉を無視して、彼はわたくしに近付いて、愛おしそうに目元を細めて頬に触れた。
「わ、わたくし、あなたのことを全然知らなくてよ……!」
「知っている。それは、これから知っていけばいいことだろう? 俺はどうしても、カミラ嬢がいい」
そんなことを言われると、心が揺れ動く。
思えば『わたくし』を求めてくれる人なんて、いなかった。
家族も、婚約者も――……
わたくし、こんなに単純だったのかしら? ――でもね、すごく、すごく嬉しくて――同時に切なくなった。
――ああ、わたくし、こんなにも愛に飢えていたのね――って。
「も、元の身体に戻ってから、考えさせてください」
「良い返事を、期待している」
甘くささやかれて、頬が熱い。なにか言葉を紡がなくては、と口を開くと、バンっと屋上の扉が開いた。
そこにいたのはマティス殿下だった。……どうして、彼がここに? 目を丸くして彼を見ていていると、その視線に気付いたのか、マティス殿下がわたくしに気付いて表情を綻ばせた。……魔法を解いて、彼の言葉を待つ。
「こんなところにいたのか、マーセル。探したよ」
「殿下、マーセル嬢にあまり近寄らないでくださいと、お伝えしたはずですが……?」
クロエが眉をひそめてマティス殿下に声をかける。そんな彼女の言葉を無視して、彼はわたくしに近付いて、愛おしそうに目元を細めて頬に触れた。