【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
二人きりになった途端、彼女が冷たい声を浴びせてきた。まぁ、確かにそう思うわよね、この状況では。
「だんまり? まぁ、良いわ。殿下に言われたから治療はしてあげる。本当、どうしてあなたみたいな人が殿下の傍にいるのかしら……!」
彼女はいやいやながら『マーセル』を治療してくれた。
階段から転がり落ちたというのに、かすり傷だけだった。丈夫なのね、この身体。
てきぱきと治療をしてくれる彼女を眺める。確か、王城で何度か会ったことがあるわ。陛下が抱えている医療班のひとりだったはず。
真面目過ぎて、この学園に追い出されたのよね。マティス殿下の主治医として。とはいえ、彼には別の主治医がついているので、彼女はこの学園で保険医の手伝いをしている……らしい。
彼女はとても正義感が強く、曲がったことが大嫌いだと聞いている。だから、マティス殿下とマーセルのことも良く思っていないのだろう。
「……ありがとうございました、クロエさま」
「……どうして私の名を、知っているの?」
名前を呼んだら、露骨にいやな顔をされた。……え、マティスって彼女の名を呼んだことがないのかしら……? 目を丸くして彼女を見ると、わたくしをじっと見つめてから視線をそらした。
「だんまり? まぁ、良いわ。殿下に言われたから治療はしてあげる。本当、どうしてあなたみたいな人が殿下の傍にいるのかしら……!」
彼女はいやいやながら『マーセル』を治療してくれた。
階段から転がり落ちたというのに、かすり傷だけだった。丈夫なのね、この身体。
てきぱきと治療をしてくれる彼女を眺める。確か、王城で何度か会ったことがあるわ。陛下が抱えている医療班のひとりだったはず。
真面目過ぎて、この学園に追い出されたのよね。マティス殿下の主治医として。とはいえ、彼には別の主治医がついているので、彼女はこの学園で保険医の手伝いをしている……らしい。
彼女はとても正義感が強く、曲がったことが大嫌いだと聞いている。だから、マティス殿下とマーセルのことも良く思っていないのだろう。
「……ありがとうございました、クロエさま」
「……どうして私の名を、知っているの?」
名前を呼んだら、露骨にいやな顔をされた。……え、マティスって彼女の名を呼んだことがないのかしら……? 目を丸くして彼女を見ると、わたくしをじっと見つめてから視線をそらした。