【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「もう部屋に戻りなさい」
「はい。ありがとうございました」
立ち上がってカーテシーをすると、クロエは複雑そうにわたくしを見る。
「それでは、失礼します」
くるりと踵を返して保健室から出ようとすると、彼女がわたくしの手首を掴んだ。どうしたのかしら? と彼女を見ると「……あなたは誰?」と怪訝そうな表情で問われ、息を呑んだ。
もしかして、もうわたくしがマーセルではないとバレたの?
マーセルを演じるつもりはないので、バレたらバレたでよいのだけど。
「さっきから、私に対する態度がマーセルではないわ。それに、彼女は絶対に私の名を口にしない。殿下が話すこともないでしょうから」
「――ふふっ、素晴らし慧眼ね、クロエ。そうよ、わたくしは『マーセル』ではないわ。マティス殿下は気付いていないみたいなのに、やっぱりこういうのは女性のほうが鋭いのかしらね?」
くすくすと笑いながらそういうと、彼女は大きく目を見開いて「……カミラさま?」とつぶやいた。
婚約者にも気付かれていないのに、あまり接したことのない彼女が先に中身が違うことに気付くなんて、なんだか不思議だわ。
「……信じられません……。どうして、マーセルの中にカミラさまが……?」
「わたくしもよくわからないの。マーセルが階段を転がり落ちたとき、わたくしとぶつかって……目を開けたら中身が入れ替わっていたのよ」
「……魔法でもかけられたのでしょうか……?」
「はい。ありがとうございました」
立ち上がってカーテシーをすると、クロエは複雑そうにわたくしを見る。
「それでは、失礼します」
くるりと踵を返して保健室から出ようとすると、彼女がわたくしの手首を掴んだ。どうしたのかしら? と彼女を見ると「……あなたは誰?」と怪訝そうな表情で問われ、息を呑んだ。
もしかして、もうわたくしがマーセルではないとバレたの?
マーセルを演じるつもりはないので、バレたらバレたでよいのだけど。
「さっきから、私に対する態度がマーセルではないわ。それに、彼女は絶対に私の名を口にしない。殿下が話すこともないでしょうから」
「――ふふっ、素晴らし慧眼ね、クロエ。そうよ、わたくしは『マーセル』ではないわ。マティス殿下は気付いていないみたいなのに、やっぱりこういうのは女性のほうが鋭いのかしらね?」
くすくすと笑いながらそういうと、彼女は大きく目を見開いて「……カミラさま?」とつぶやいた。
婚約者にも気付かれていないのに、あまり接したことのない彼女が先に中身が違うことに気付くなんて、なんだか不思議だわ。
「……信じられません……。どうして、マーセルの中にカミラさまが……?」
「わたくしもよくわからないの。マーセルが階段を転がり落ちたとき、わたくしとぶつかって……目を開けたら中身が入れ替わっていたのよ」
「……魔法でもかけられたのでしょうか……?」