【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 口を開く前に、お代わりが届いた。それを受け取って、胸元に手を置き、何度か深呼吸を繰り返す。

「……クロエは、わたくしの(そば)にいてくれるの……?」
「はい、カミラさま。そのつもりです。私をカミラさまの侍女にしてください。といっても、侍女らしいことなんて、一度もしたことがないんですけれどね」

 医者という職業を捨てて、わたくしの手を取ってくれるの……?

 視界がぼやけてきた。クロエはハンカチを取り出して、わたくしの目元を優しく(ぬぐ)う。ダメね、今日も泣いてしまうなんて……

 だけど、これは昨日のような涙じゃない。

 彼女がわたくしのことを思ってくれるのが嬉しくて出る涙だから……許してちょうだいね。

「それで、どうでしょうか。移住してきた者にも、リンブルグは優しいですか?」
「ああ。知っているかい? リンブルグはこの大陸の中で一番、移住者が多いんだよ」
「よく、暴動が起きませんね?」
「ならないように手は打ってあるからね」

 ということは、移住者にも国民にも優しい制度があるということ、よね。

 実際はどうなのかしら、リンブルグ……本当に興味深いわ。涙を拭いて、わたくしたちはレグルスさまとブレンさまへ視線を向けた。
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