〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
別室で会見の様子を見守っていた高園海斗は、サングラスをかけて事務所の地下駐車場に向かった。
じきに会見を終えた記者達が事務所の前に集い始める。その前にここを脱出したかった。
今日はマネージャーの送り迎えではなく自分の車で来ている。地下駐車場で海斗を待っている紺碧《こんぺき》の塗装の愛車はツーシーター。
車なんて走れば何でもいいと思っている海斗のために、お節介な兄が選んできた外車だ。
先ほどからスマホが着信を続けている。シートベルトの装着前にスマホを覗き込んだ海斗は顔をしかめた。できればあまり関わりたくない相手の名前が、スマホ画面の中央に偉そうに居座っている。
仕方がないので通話に応答する。電話を繋げる前に彼は二度、溜息をつき、舌打ちを一回した。
{よお、面倒見の良い二枚目ボーカル。いつも思うが、良い車乗ってるねぇ}
軽薄な声の主は週刊ルポルタージュの記者、桑田真隅。
まだUN-SWAYEDが新人と呼ばれていた時代に巻き込まれたあるトラブルを契機に、UN-SWAYEDはその後も桑田と連絡を取り合う関係を築いた。
芸能人と週刊誌の記者も持ちつ持たれつだ。桑田は敵に回すより味方につけるべき人間だと判断したのは、UN-SWAYEDのリーダーだった。
(早河シリーズスピンオフ【Quintet】参照)
『咲希の会見はまだ続いていますよ』
{会見に行ってるのは俺の同僚だ。あんたの車を見かけたって情報が入ったんで、ま、ち、ぶ、せ}
通路を挟んだ向かいに駐車する車と車の間から、桑田は文字通りにゅっと出現した。駐車スペースのあちらとこちらで男達は電波越しの会話を続ける。
『咲希の移籍はあの二人のような枕ではなくエスポワールからの正式なスカウトですので、そこは来週の記事でよろしくお願いしますよ』
{任せておけ。だが他社や咲希のアンチがどう出るかは保証できねぇぞ。咲希がお宅の社長と寝ただの、お前さんの女だの、雑誌の記事でもSNSでも、あることないこと書いて騒ぎ立てるだろう}
優奈の薬物使用に加えて果林と凛々子の枕営業により、フルリールのアイドルの仮面は剥がれた。
暴かれた彼女達の真の姿に落胆と失意の地獄に堕とされたファン達は、ひとり残った咲希に希望を見出だす。
けれど咲希の大手事務所の移籍を歓迎する者ばかりではない。優奈や果林達を応援していたファンには、咲希だけが光の当たる場所に居続ける展開は面白くない。
咲希をやっかみ、侮辱する人間は必ず現れる。
高倉咲希並びに他のエスポワール所属タレントへの侮辱、暴言、脅迫などの発言がSNSに散見した場合は、名誉毀損の法的措置を検討する意向を社長は記者会見で伝えていた。
『週刊誌やアンチに潰されるほど俺もメンバーもヤワじゃないんで。そうなれば俺達も咲希も、結果を出して外野を黙らせればいいだけです』
{言うことが年々リーダーに似てきたな。さすが兄弟}
『それ、まったく褒め言葉じゃないですよ……』
彼女を迎え入れるエスポワール側は警察を通じて咲希への薬物検査を行った。陰性の結果は昨晩出たが、薬物検査の経緯と結果を世間に報告しなければならなかった。
これは咲希をエスポワールに移籍するにあたり、エスポワールの役員側が社長に提示した条件でもあった。
じきに会見を終えた記者達が事務所の前に集い始める。その前にここを脱出したかった。
今日はマネージャーの送り迎えではなく自分の車で来ている。地下駐車場で海斗を待っている紺碧《こんぺき》の塗装の愛車はツーシーター。
車なんて走れば何でもいいと思っている海斗のために、お節介な兄が選んできた外車だ。
先ほどからスマホが着信を続けている。シートベルトの装着前にスマホを覗き込んだ海斗は顔をしかめた。できればあまり関わりたくない相手の名前が、スマホ画面の中央に偉そうに居座っている。
仕方がないので通話に応答する。電話を繋げる前に彼は二度、溜息をつき、舌打ちを一回した。
{よお、面倒見の良い二枚目ボーカル。いつも思うが、良い車乗ってるねぇ}
軽薄な声の主は週刊ルポルタージュの記者、桑田真隅。
まだUN-SWAYEDが新人と呼ばれていた時代に巻き込まれたあるトラブルを契機に、UN-SWAYEDはその後も桑田と連絡を取り合う関係を築いた。
芸能人と週刊誌の記者も持ちつ持たれつだ。桑田は敵に回すより味方につけるべき人間だと判断したのは、UN-SWAYEDのリーダーだった。
(早河シリーズスピンオフ【Quintet】参照)
『咲希の会見はまだ続いていますよ』
{会見に行ってるのは俺の同僚だ。あんたの車を見かけたって情報が入ったんで、ま、ち、ぶ、せ}
通路を挟んだ向かいに駐車する車と車の間から、桑田は文字通りにゅっと出現した。駐車スペースのあちらとこちらで男達は電波越しの会話を続ける。
『咲希の移籍はあの二人のような枕ではなくエスポワールからの正式なスカウトですので、そこは来週の記事でよろしくお願いしますよ』
{任せておけ。だが他社や咲希のアンチがどう出るかは保証できねぇぞ。咲希がお宅の社長と寝ただの、お前さんの女だの、雑誌の記事でもSNSでも、あることないこと書いて騒ぎ立てるだろう}
優奈の薬物使用に加えて果林と凛々子の枕営業により、フルリールのアイドルの仮面は剥がれた。
暴かれた彼女達の真の姿に落胆と失意の地獄に堕とされたファン達は、ひとり残った咲希に希望を見出だす。
けれど咲希の大手事務所の移籍を歓迎する者ばかりではない。優奈や果林達を応援していたファンには、咲希だけが光の当たる場所に居続ける展開は面白くない。
咲希をやっかみ、侮辱する人間は必ず現れる。
高倉咲希並びに他のエスポワール所属タレントへの侮辱、暴言、脅迫などの発言がSNSに散見した場合は、名誉毀損の法的措置を検討する意向を社長は記者会見で伝えていた。
『週刊誌やアンチに潰されるほど俺もメンバーもヤワじゃないんで。そうなれば俺達も咲希も、結果を出して外野を黙らせればいいだけです』
{言うことが年々リーダーに似てきたな。さすが兄弟}
『それ、まったく褒め言葉じゃないですよ……』
彼女を迎え入れるエスポワール側は警察を通じて咲希への薬物検査を行った。陰性の結果は昨晩出たが、薬物検査の経緯と結果を世間に報告しなければならなかった。
これは咲希をエスポワールに移籍するにあたり、エスポワールの役員側が社長に提示した条件でもあった。