今夜はきっと眠れない
「っくううう! やったああ!」
 電話を切った私は思わず大きな声をあげた。
 周囲の人たちにガン見されて、慌てて口をおさえる。

「藤沢、そんなにうれしいことがあったのか?」
 からかうように、部長に言われる。
「ありました」
 私は席を立って部長のデスクに歩み寄った。

 部長は優しく微笑して私を待つ。
 彼は三十三歳で部長にまでなった人で、その有能さは全社に知られている。

 さらにはイケメンっぷりも凄まじい。彼に見つめられた女性は一秒で恋に落ちるという伝説まで作った。

 当然のように私も彼に恋している。ライバルが多すぎて恋してますなんて口に出すことはできないけど。

「宝くじでも当たったか?」
 部長がいつものようにからかってくる。クールな外見と違う軽やかさが女子ウケ抜群だ。

「違いまーす」
 私も軽く答えて、もったいぶって間を置く。
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